院長ブログ

四つ葉のクローバー
宇都宮市竹林、よつばハートクリニック院長のブログ

固定観念

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    平昌オリンピックが閉幕した。4年に一度の祭典はやはり色々な驚きに満ちている。残念な結果に終わった葛西選手だったが、団体戦が終わった直後のインタビューで、4年後の北京への課題を口にしていた。オイ、マダデルツモリカ。もう終わったと思ていたスピードスケートにもう1試合あって、どちらかと言うと妹より注目度の低かったお姉ちゃんのほうが2個目の金を取ったのにも驚いた。マススタートッテナンダ?▼しかし一番驚いたのはチェコのエステル・レデツカ。この22歳の女性はオリンピック史上初のスノーボードとスキーの両方にエントリーした選手であった。どちらかと言うと得意なのはスノーボードで、スキーではW杯の表彰台に立ったことはなかった。しかし平昌ではまず行われたアルペン・スーパー大回転で26番スタートからまさかの金メダル。雪面が荒れる関係でシード選手から滑っていくアルペンでは、遅いスタートの選手が勝つことは殆ど起こり得ない。勝ったつもりで待っていたオーストリアの選手は0.01秒差で2位に落ちて呆然としていたが、トップに立った本人が一番びっくりしていた。‘No. Must be some mistakes.’ そしてこっちは本命だったスノーボードのパラレル大回転でも金▼この選手14歳の時にコーチにどちらか一つに絞るように言われて、それならコーチを換えるまでだと答えたそうである。我らが二刀流、大谷翔平選手もプロ入り当初から老害プロ野球OB達から両方は無理だと散々言われてきた。この期に及んでまだ言っている奴もいる。ダレガデキナイッテキメタンダ?関係ないが小1だった長女が漢字で書けるはずの言葉をひらがなで書いていたから問い質したら、習ってない漢字は書くなと先生に言われたというのを今急に思い出して腹が立ってきた。いつの世も下らない大人は居るものである▼医療の世界でも画期的な治療法というのは非常識とされる中から生まれてくる。1929年自らの血管を使ってカテーテルを心臓まで進めたドイツのフォルスマンと言う医師(泌尿器科の医師である。使用したのは尿道用のカテーテル)はその廉で狂人扱いを受け病院を解雇された。その後1956年のある日、突然ノーベル賞受賞の知らせが届くまでを失意の中、田舎で開業医として生活した。今やカテーテルによる画像診断やそれを介しての血管内治療は多くの人の命を救っている▼最近当クリニックの2人の高齢重症大動脈弁狭窄症の患者が、立て続けに東京の病院でTAVI「タビ」経カテーテル大動脈弁留置術を受けて来た。狭くなった大動脈弁にカテーテルを介してステントに埋め込まれた人工弁を植え込む手技である。狭くなった僧帽弁をバルーンによって拡げる方法(イノウエバルーン)は以前からあった。若かりし頃、何故大動脈弁では出来ないのか先輩医師に訊いたことがある。大動脈弁でバルーンを膨らますと左心室の圧が高まりすぎて破裂する・縦しんば拡がったところでまたすぐ狭窄するというのが答えだった。日本人はダメだということを教えるのには長けている。だから2002年にフランスで最初に行われたTAVIのレポートを最初に見た時、非常に驚いた。速い速度でペーシングして止まっている心臓に対して行ったのと似た状態にして行うということと、折りたたんだ人工弁を植え込むということでこの2つの問題を解決していた▼この方法の日本での保険償還は2013年とかなり遅かったが、それから4年余りにして既に完成された技術だ。実際に2人とその家族の感想は何れも思ったより時間が短く簡単だったとのことだった。これまで開心術に適さない多くの高齢大動脈弁狭窄症患者を失って来たので隔世の感がある。若者は、医学の進歩は、可能性に満ち溢れている。今更そういうものを目指す歳でもないが、足を引っ張る存在にだけはなりたくないものである。

     


    インフルエンザ狂騒曲

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      振替休日の月曜日、宇都宮市夜間休日診療所で日中診療をした。医師会を通じて下りてくる仕事で、開業医の義務みたいなものだ。去年の7月に19時30分から23時30分までやって、その時はそんなに忙しくなかった。今回は9時から17時と言う話だったので、お昼ご飯は外に食べに出られるのかな?などと舐めたことを考えていた。着いてみると既に受け付けは黒山の人だかり。えっ、なにそれ?▼中に入ると看護師が、なんでも昨日は日勤帯は270人だか280人だか来たんだと言う。大半がインフルエンザかその疑いの患者らしい。大変なところへ来たと思うのもつかの間、次から次へと患者がやってくる。ナニナニ、フムフム、ソレハインフルエンザカモシレマセンネェ。ケンサシマスカ?ゴキボウ?カンゴシサン、オネガイシマス。エッ?ボクガヤルノ?。そう、あの例の細長い綿棒で鼻をグリグリやるやつ。心優しいうちのクリニックのスタッフは院長にそんなことをさせたりしないのだが、如何せんここでは数が多すぎて、看護師は検査キットをやりくりするだけで精一杯だ。自分のクリニックには滅多にインフルエンザの患者が来ないので、ただただ驚きである。しばらくやってみるとインフルエンザの検査を希望しない人など全くいないことに気付く。ハイ、イツカラ?キノウカラ?ヒダリムイテアゴアゲテ、ハイ、グリグリグリ。5フンデデルカラソトデマッテテネ。流れ作業である▼ハイ、Bデシタ。アナタハA。オオ、メズラシイ、A・Bリョウホウデテイル。5日間朝晩飲む飲み薬と5日間朝晩吸入するやつと今吸入してそれで終わりという3種類の中から選んでもらう。どれが一番早く治るかって? サァ?▼特に発症から時間が経っていない場合、陰性だからと言って違うとは限らないのが問題だ。だからそれなりの症状があって周囲にそういう状況があれば陰性でもインフルエンザとして処方するという考えもあるが、それなら検査などしなければよいような気もする。どうしても確かめたければ明日またお近くで検査してもらって下さいという説明も必要。どう見たって軽症で、もちろんそんな中にも陽性になる人もいるが、陰性だと知ると喜んで薬ももらわずに帰る人も多い。インフルエンザかどうか調べてこいと言う社会的圧力があるのだろう。そう言えば時々書かされる治癒証明書というのも変な話だ。インフルエンザが治っているかどうか、どうして見ただけで判断がつくというのか。更にはインフルエンザであれば学校を休んでも皆勤賞に影響しないというのも変だ。インフルエンザを他のウイルスによるかぜ症候群と区別する特段の理由がわからない▼最後に1台救急車を送り出して時計を見たら19時を少し回っていた。4人の医師で350人超を診たんだそうである。こういう時のスピードには自信があるから100人以上は診ていたと思う。インフルエンザの検査をしなかったのは10人いただろうか。終わった後クリニックで仕事を少し片付けようと思っていたが、さすがにそんな気力はもう残っていなかった。家に帰ってアルコール消毒だと称して酒を飲んだら少しピッチが速すぎたらしい。テレビを見ていた筈だったが、気が付いたら床で潰れて寝ていて高梨沙羅は2本目を飛んだ後だった。


      幸福の理論

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        物理学者アルバート・アインシュタインは講演のため日本に向かう船上でノーベル賞受賞の知らせを受けた。日本に着くと盛大な歓迎を受け、予定より多くの講演をこなしたとある。1922年のことだ。滞在した東京・帝国ホテルでチップの持ち合わせがなかったためか日本人ベルボーイにチップ代わりにメモを渡しこう言ったという。「運が良ければ、これは普通のチップよりも価値あるものになるかもしれない」▼昨年3月、日本人の父とドイツ人の母の間に生まれた35歳の男性がハンブルクの自宅で引っ越し作業をしていて、食器棚の引き出しの中から黄変した封筒を見つけた。中には古い紙片。ホテルのメモ用紙にドイツ語でこう書かれていた。《静かで質素な生活は、絶え間ない不安にかられながら成功を追い求めるより、多くの喜びをもたらす》。件のベルボーイの妹の孫にあたるこの男性は、自分が持っていて劣化してしまうよりもと昨年10月競売にかけた。数千ドルにはなるだろうと思っていたらしいが、あっという間に吊り上がり156万ドルで落札された。天才が日本人ベルボーイにドイツ語で、どういう意図でそのようなことを書き記したのかは判然としないが、まさか95年後にオークションにかかることを見越していたのだろうか。相対性理論(Theory of Relativity)の提唱者が幸福を相対化しているところが面白い▼この間行ったスキー場は日本人より海外の人の方が多かった。皆3-4週間ぐらいの予定で来ているのだそうである。幸せとは何であろうか。もちろん人から必要とされること・働くことも幸せである。しかし大事なことはwork-life balanceなのだろう。日本人は単純に働き過ぎというよりはこのバランスが取れていないのだろう▼先日、元いた病院のOB会(正確にはOBと現役医師の交流会)に出席した。そこにいたOBとしては私は若い方から数えて2番目で、25年前にこの病院に来た時既にOBだった方もおいでで、眩暈のするようなレジェンドたちである。何の偶然か複数の方々から同じようなことを言われた。「君、働き過ぎちゃいかんぞ」と。そんなことを言ってくださったうちの1人、80歳を過ぎた外科医は、しかしまだ現役で手術室に入っている。今シーズンはもう2回スキーにも行ったそうである。釣りもゴルフもする。最早人知を超えた世界だ▼今国会の焦点の一つは「働き方改革」だそうである。社会が大きく変わるには残念なことに何か事件が必要なのかもしれない。飲酒運転が社会的にも厳罰化されるようになり、交通事故死は減って町の自動車修理工場も仕事が減ったのは2006年福岡の海の中道の事故が転換点だったと記憶している。今回もし制度が改善されて良い方向に向かうとしたら、2015年の電通社員の過労自殺がそう記憶されるだろう。しかし裁量労働の問題や教員や医師など特殊な職業にどう適用していくかなど問題は山積している。開業して1年半、自分でも意外なことに労働時間は明らかに増加した。絶え間ない不安にかられている自分がいる。一体何を追い求めているのだろう▼メモはもう1枚あって、《意志あるところに道は開ける》とありこちらは24万ドルだったそうだ。アインシュタインが言った言葉としては普通過ぎたのかもしれない。


        あけましておめでとうございます

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          新年あけましておめでとうございます。クリニックを開業して2回目の正月を迎えました。より多くの患者様のお役に立てるよう、より一層努力してまいります所存にございますので、何れも様におかれましては、本年もどうぞよろしくお願い申し上げ奉ります。ブログの更新も全く滞ってしまっていて申し訳ございません。もう20年もお会いしていないような遠方の方からの年賀状に「ブログ楽しみにしています」とあり、これではいけないと思いました▼さて、正月早々家族を連れてちょっとだけスキーに行って来ました。一人しか医者がいないクリニックの院長がスキーなぞして、怪我でもしたらどうするんだというご批判もあるだろうことは承知しておりますが、子供たちに雪を見せたいと思いまして。やはりこういうスポーツは子供の時に体験しておくに限ります。小さい子ほどあっという間に滑れるようになります▼かく言う私は、学生時代に友人に連れられて行って1回で懲りて、その後病院に勤めだしてから職員旅行で行くようになりました。子供ができる前の一時期、四駆にキャリアを付けて狂ったように通っていたことがあり、1シーズンに22日!と言うのがピークでした。随分ヒマな病院に勤めていたと思われてしまうかも知れませんが、休みと言う休みは12月から4月までほぼ滑っていたように記憶しています。しかし、大人になってから始めたのではやはりコブ斜面をスイスイとまでは行かないものです▼今回のスキーは実に7年ぶりで、2011年の3月あの大震災の直前に岩手で滑ったのが最後でした。ですから私にとっても家族にとっても本当に久しぶりで、一番下の子は完全に初めてでした。驚いたことが2つ。1つは意外に覚えていて、思ってたより滑れるものだということ。2つ目は、しかしそれが30分ぐらいしか続かず、あっという間に足が言うことをきかなくなったこと。スキーとは要するにリフトやゴンドラで得た位置エネルギーを力学エネルギーに変換してスピードとスリルを楽しむものです。そのままだと速度超過で最終的に何かに激突しますから全て足で受け止めてスピードを殺さなければならない訳です。学生時代に1度懲りたのも、止まり方をよく教わらずに滑って、ゲレンデが終わっても止まらずに道を渡って店先に突っ込んだからでした。そして位置エネルギーは質量に比例するので体重が重い私は大変で、一番下の子はスクールに入れるや否やあっという間に滑れるようになって、しかも軽いので疲れない訳です。さんざん付き合わされた挙句、最後に‘パパも意外に滑れるんだね’と言われてしまいました。今年は患者さんに言ってばかりでないで、自分でも少し鍛えて痩せなければなりません。この子らともう何年かスキーを楽しむために。


          安定剤と導入剤と睡眠薬と

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            医者が普通によく処方する薬の中で絶対に手を出さないほうがよい(と私が思う)薬があるというと驚かれるだろうか。ベンゾジアゼピンという一群の薬である。アルプラゾラム(ソラナックス)、エチゾラム(デパス)、ロラゼパム(ワイパックス)などの抗不安薬やブロチゾラム(レンドルミン)、トリアゾラム(ハルシオン)などの睡眠薬(いずれもカッコ内は商品名)がこれに含まれる。一般名では〜ゾラム、〜ゼパムと付くことが多いが、そうでない場合もあるから注意が必要である。懺悔しなければいけないが、自分もかなり以前の一時期には時々処方した。今思えば安直に過ぎたと思う。何がいけないのか▼第一に依存性つまり離脱症状の強さである。長く使用すればするほどその度合いは増す傾向にある。抗不安薬としての使用では中断により焦燥感や不安感が増大し、とにかくそれ無しではいられないのである。また睡眠薬としても無いと眠れなくなるのである。上述した薬剤名はほとんど短時間で効果を発揮するものばかりであるが、一般にそうした短時間作用型のものほど依存性も離脱症状も強い。第二にみんな当然のように運転しているのだが、いずれも添付文書上運転を禁じられているものばかりである。というと睡眠薬としての使用であれば飲んだら寝るので問題ないように思われるかもしれないが、重要な基本的注意として必ず「本剤の影響が翌朝以後に及び、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、自動車の運転等の危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること」と書かれている。実際に内服中や内服した翌日の事故率上昇やブレーキに対するレスポンスの悪さ、車線をトレースする能力の低下などを示すデータは多数出ている。第三に死亡率の上昇である。肺炎特に誤嚥性肺炎の発病率が高まるし、転倒骨折して寝たきりになる確率も高まる。また認知機能の低下とも関連を裏付けるデータもある。睡眠時無呼吸があれば当然悪化する▼だが何よりも常用量依存といって通常の量を2週間とか比較的短期間内服しただけで明らかにおかしくなってしまう人がいる。内服を継続していても離脱症状が出て、増量や他剤の併用を余儀なくされるのである。当然何かのきっかけで内服が開始されたのであろうが、どうやっても元の自分に全く戻れなくなってしまうのである。こういった様子は‘Benzo Case Japan’というサイトに詳しい。日本でふとしたきっかけでベンゾジアゼピンを処方されて大変な思いをしたニュージーランド人が運営しているものである。少し読みづらい日本語ではあるが立派なものだ。精読すると臨床医の端くれとして思い当たる節がたくさんある▼クリニックを開業してこの方というもの動悸や胸部不快を訴えて、ベンゾジアゼピンの依存症と思われる方が多数来院された。そして止めさせよう、止めて頂こうといろいろ試みたが、最終的には皆来院されなくなってしまった。恐らく安直にこれら薬剤を処方してくれる元のクリニックか他の医療機関へと移っていったものと思われる。止めさせ方が少し性急だったかもしれないとも反省もしているが。この業界に入ると同業者を批判してはならないと先輩や同業者から色々忠告や警告を受けるが、声を大にして言わなければならない。お笑いコンビの片割れがこの類の薬を3つ(運転禁忌・運転禁忌・運転注意の3つである)飲んで運転して捕まったのは記憶に新しい。記事によると初めて飲んだみたいなことが書いてあったが、初診の患者にこれら3つをいきなり同時に出すなどということは到底ありえないと思うのだが本当だろうか。本当だとしたら一体患者を何だと思っているのであろうか。


            スタチン

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              3年前の春。当時52歳のSさんは遠距離を車で通勤しており、その日は職場の歓送迎会が終わった後市内で宿泊した。高血圧症と脂質異常症を42歳から指摘されており、高血圧症については近医で処方を受けていたが、脂質異常については軽微との判断でそのまま経過観察された。以下当時のチャートから。

              歓送迎会で飲酒後宿泊。21:50 頃胸痛を自覚し家族に今から救急車を呼ぶ旨を電話。
              22:01 消防覚知。22:05 フロントで昏倒。Bystander CPR(その場にいた人が直ちに行う心肺蘇生)なし。
              22:06 現着時深昏睡あえぎ呼吸(死戦期呼吸)。CPA(心肺停止)の判断でCPR(心肺蘇生)開始。初期波形Vf(心室細動)で以後搬送までにAED(自動体外式除細動器)作動6回。 
              22:23 病院到着時PEA(無脈性電気活動)であったが、ベッド上で再びVf。ACLS(二次救命処置)を開始しcardioversion (電気ショック)1回で22:27 ROSC(自己心拍再開)。急性心筋梗塞と診断され心臓カテーテル室搬入。左冠動脈前下行枝の完全閉塞に対し吸引で再灌流を得た後、ステント留置術を行った。手技中Vfありcardioversion。IABP(大動脈バルーンパンピング;簡単に入れられる心臓の補助装置)を装着しCCU(coronary care unit;心臓の集中治療室)に入室。アシドーシス(体液が循環不全などで酸性に傾くこと)が遷延しており、多量の強心剤でも血行動態が維持されず、再度カテーテル室に搬入してPCPS(比較的短時間で開始できる人工心肺)を開始した。当初大量の血流を要していたが、その後順調に経過。4日目にPCPS抜去。翌日IABP抜去、人工呼吸器から離脱。以後一時的に心不全兆候を認めたものの比較的順調にリハビリを行い、17日目に退院した。

              ‘ツッコミどころのない人は運ばれてこない’、これは救命センターで働いていた当時の私の持論であった。では何故このような一次会で帰るタバコも吸わない善良な人がこんな目に遭わなくてはならなかったのだろうか▼搬送された時のデータはLDLコレステロール 119mg/dL, HDLコレステロール 34mg/dL, 中性脂肪 221mg/dL, HbA1c 5.5%だった。空腹時でない点が微妙であるが低HDL(40〜)であるのは間違いない。‘善玉’が低いのである。そもそも基準値とは何であろうか。LDLコレステロール(いわゆる‘悪玉’)は70〜139とあるがそれでよいのだろうか▼基準値をどうやって決めているかというと95%の人が入るように機械的に決めているだけだ。200人連れてきて、上下5人ずつはみ出すようにである。食べ物が溢れている国では高めに決まるはずである。有病率の問題もある。例えば糖尿病のような日本人の1割以上が罹患している病気では95%に入っているからと言って安心はできまい。逆にどういう人が安全に長生きをするかというのを統計的に解析すると、層別化が必要なことが見えてくる。つまり,燭瀬灰譽好謄蹇璽襪高いだけの人 高血圧や糖尿病などの他の危険因子を持っている人 6洪款/心筋梗塞や脳梗塞などの心血管イベントを既に起こしてしまっている人で分けて考えなければならないのだ。勿論を一番厳しくしなければならない。しかも年を追う毎にデータが蓄積されることによって更に厳しくなって行く。今年動脈硬化学会のガイドラインが改訂され、に関しては<100から<70になった。つまり70以下まで下げた方が心血管イベントの再発率が低いということだ。正直に言ってやっと私の実感に近い数字になったという感がある。では△呂匹Δ。大雑把に言えば100以下だろう。どうやって下げるかと言えば‘スタチン’である。正式にはHMG-CoA還元酵素阻害薬と呼ばれる一群の薬剤であるが、全て一般名に〜スタチンと付くので業界用語で‘スタチン’と呼ばれている。現在6種類のスタチンが上市されているが最後のロスバスタチンがこの冬で特許切れとなり、全てジェネリックが揃うことになった。医者の私がこういうことを言うのもなんだが、‘努力よりスタチン’である。ところがこのスタチン、中々素直に飲んでもらえない。上述の如く↓の人は‘基準値’に入っていても内服しなければならないのだが、それが理解してもらえない。薬はなるべく朝1回にに揃えるようにするのだが、それでもである。何年か前に高血圧の薬とスタチンの合剤が発売されて、脂質のコントロールが格段に良くなった人が大勢出た。血圧の薬は真面目に飲むけどスタチンは捨てちゃってたのである。合剤にすると飲まないと血圧が上がるから仕方なく飲むのだ。嗚呼▼冒頭のSさん、CCUでのご子息の怒号が今でも耳に残っている。「なんでだよーっ、おやじー、起きろよー!!」。薬で眠ってるのだけなので本当に起きたら困るからあまり大きな声出して揺すらないで欲しいとは心の声。断言するが(と言っても証明のしようもないが)、スタチンさえ出されていればこうなってなかったのである。後から聞いたことだが、まともに口もきかないほど親子関係は良くなかったが、この入院をきっかけに仲良くなったらしい。「雨降って地固まる」というと軽すぎるだろうか。

               

               


              AED

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                4年前の初夏のことだ。仮にIさんとする。Iさんは50歳(当時)の男性。東京都在住で平日の朝、商用で初めて宇都宮を訪れた。そして駅のバス乗り場で倒れた。詳細な時刻は不明。顔面に挫創あり。9時15分に駅職員がAED(自動体外式除細動器)で1回ショックをかけたが、CPR(心肺蘇生)は行わず。その後10回ショックメッセージがあったが、怖くなり全てキャンセル。同18分救急隊現着時、死戦期呼吸あり。CPR開始。初期波形心室細動でその場で2回ショックを行い、車内に収容した。車内で4回ショックを施行したが心室細動のままであった。9時41分救命センター着。やはり心室細動であり静脈路確保後エピネフリン投与。同43分に電気ショックをかけ、44分に自己心拍再開(ROSC; Return of spontaneous circulation 業界用語で‘ロスク’。サ変動詞化可。‘ロスクした’とか)した▼循環器内科はこのタイミングで呼ばれる。Bystander CPR(バイスタンダー;その場にいた人 が直ちに行う心肺蘇生)はこれじゃあったとは言えないし、30分以上止まってたのか厳しいなぁと思いつつも周囲の血気盛んな若いお医者さんたちに急かされるようにして一通りのことをやる。心電図では判らなかったが冠動脈造影をしたらやはり左前下行枝の根元で詰まっていた。ステントを植え込んだはいいがその後どんどん血行動態が悪化し、PCPS(経皮的心肺補助装置;短時間で比較的簡便に入れられる人工心肺)を装着した。通常これは負け戦である。東京から駆け付けた奥さんの凍り付いたような顔が忘れられない。茫然とはこのような状態を言うのだろう。人間はあまりに衝撃的なことが起きると反応を失うものか▼考えて欲しい。AED(Automated External Defibrillator)とは何であろうか。心室細動の時にショックを加えてROSCを得ようという機器である。心室細動かどうかは「自動」的に機械が判断する。何故最後の発射ボタンが人間に委ねられているかというと、救命対象に誰も触れていないかまでは機械で判断できないからである。触れていればその人も通電されてしまう。対象の意識状態や呼吸が普通ではない(死戦期呼吸;前項参照)と感じたらとりあえず装着してみること、そしてショックメッセージが出たらそれに従うこと、従い続けることである。更にはAEDを使用してもROSCが得られなければCPRは続けなければならない。AEDの利用により救命対象に逆に障害を与えた場合でも悪意がなければ使用者は患者本人や遺族から責任を問われないことになっているし、基本的にそんなケースはありえない。日本の救急車は要請から現着まで平均で7分。それでは間に合わないので各所にAEDが配備されていることを理解しなければならない▼Iさんは今、東京から私のクリニックに通院している。第10病日頃から徐々に意識を回復し、第29病日に独歩退院した(と書くと簡単だが、気管切開したりなかなか壮絶だった)。どうせ難しいだろうけど次に助ける人のための練習だと思って治療していたのが正直なところ。もちろん手は抜いてないが、どうして助かったのだろう。東京の病院に紹介するものだと思っていたが、ご希望もあって続けて拝見することにした。遠隔期にステント留置部に再狭窄を来したが、バルーン治療を追加してその後は無事である。さすがに開業するとき再度東京の医療機関をお勧めしたのだが・・・。妙に明るい人なので後遺障害かな?と思って何度か奥さんに確認したが(何度も訊いてすみません)、元からだそうである。


                心「肺」停止

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                  以前から不思議に思っている言葉に「心肺停止」というのがある。心臓が止まれば最終的には肺も止まる。脳も止まる。肝臓も腎臓も。何故「心停止」と言わないのだろう。肺だけクローズアップされる理由は何か。英語にするとcardiopulmonary arrest (CPA)になる。救命センターで仕事をしていると、「シー・ピー・エーの患者さん入りまーす」と一報が入る。おいおい、この忙しいのにマジかよ・・・・と心の声。ところが英語圏での使用はcardiac arrest(心停止)の方が多いようである。Cardiopulmonary resuscitation(CPR; 心肺蘇生)という言葉はある。心臓マッサージとともに人工呼吸をする必要があるからであるが、そこから派生したのだろうか▼少し前のニュースであるが、皆さんご覧になったであろうか。

                  新潟県加茂市の高校で7月、野球部の練習直後に倒れ重体になっていた2年生の女子マネジャー(16)が、5日に入院先の病院で亡くなった。死因は低酸素脳症だった。7月21日午後5時半すぎ、3・5キロ離れた野球場での練習に参加。午後7時半ごろに練習を終え、部員と一緒に走って学校に戻った直後、玄関前で倒れたという。駆けつけた監督は「呼吸は弱いけれどある」と判断し、救急車が来るまでの間AED(自動体外式除細動器)は使用しなかったという。(2017年8月6日朝日新聞より抜粋)

                  記事の内容から判断するに、消防署で一般市民に対して行う講習を受ければできる程度の心肺蘇生とAEDの使用があれば助かった蓋然性が高い。この件に関する様々な報道で‘死戦期呼吸’という言葉が出てくる。結論から言うと心臓が止まっていても呼吸が完全には止まっていない状態があり、その呼吸の仕方には一定の特徴があって、これが見られたら心肺蘇生を開始しなくてはならないということだ▼死戦期呼吸とはどんなものだろうか。_竺楔撞 下顎を動かして空気を飲み込むような呼吸 顎だけ動いて胸郭は動かない鼻翼呼吸 鼻翼が広がったり縮んだりでやはり胸郭は動かないあえぎ呼吸 深い吸息と速い呼息が数回続いた後に無呼吸となる。一方心停止はどういうふうに定義されるか。/汗纏 (asystole) 心電図もまっ平らな状態¬橘性電気活動 (pulseless electrical activity) 心電図上収縮波形はみられるが脈が触れないL橘性心室頻拍 (pulseless ventricular tachycardia) 心室頻拍で脈が触れないものた桓失抛 (ventricular fibrillation) 心筋が不規則に痙攣し、機能的な収縮運動がみられない。新潟県のケースは報道から心室細動だったと考えられる。心静止でも1分ぐらいは死戦期呼吸が見られることはあるが、長く続かない。一方心室細動ではかなり長く観察されることもある。実は血圧にすると30mmHgぐらいに相当する血流が出ており、脳幹機能がある程度保たれるからである。だから心静止より心室細動のほうが同じ心停止に分類されていても断然蘇生率も社会復帰率も高い▼心臓が止まれば呼吸も直ぐ止まる・呼吸があれば心臓も動いているという思い込みがあったのであろうか。「心肺停止」という言葉が足を引っ張っているような気がした。


                  お蔭様で一年

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                    昨年9月の保険診療開始から1年が経ちました。どうにかこうにかやってこられたのも、まずは信頼して掛かってくださっている患者さんたちの、また連携していただいている医療機関の、手伝ってくれているスタッフのお蔭であるとただただ感謝するばかりです。この間、多くの新しい出会いとそして少しの別れがありました。果たして人の役に立てているのか、振り返り振り返り反省する日々です。一年前までは大きな病院で仕事をしていましたから、自科にしろ他科にしろなんとなく新しい診断や治療法が自然に知識として入ってきていましたが、ここではそうはいきません。そこでこれからのポリシーとして、

                     

                    ‐錣某靴靴ぐ絣愧亮院治療手段をキャッチアップし、自分の中で評価して、患者さんに勧めるべきは勧められるようにしておく。

                    ⊆院で完結できる患者さんはなるべくそうできるように、common disease(ありふれた一般的な疾患)を中心に守備範囲を拡げていく(拡げ過ぎに注意!)。

                    4擬圓気鵑砲箸辰謄戰好箸力携が取れるように常にアンテナを張り、連絡を密にしておく。

                    ぢ臉擇覆里楼譴砲眛鵑砲皀灰潺絅縫院璽轡腑鵑反監澄△修離好ルに磨きをかけていく。

                    ゾ个だ爾寮笋┐覆ぅリニックにしたい。 

                     

                    こんなことを考えています。‘いかにして最も幸せな姿をデザインしていくか、そんな思いを名前とロゴに込めたつもり’ と以前に書きましたが、果たしてどのくらい実現出来ているのか、自問する毎日です。
                     


                    口に入れないほうがいいもの

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                      ちょっと記憶にないぐらい忙しい月末だった。21日金曜日は講演会の演者、日曜日は夜間休日診療所の当番、木曜日はまた講演会の演者、金曜日は講演会の座長、土曜日は講演会のパネリストみたいなものをやった。来る話を断らないからこういうことになるのは判ってはいるのだが、断るともう来なくなるんじゃないかという恐怖感でこうなってしまった。中で座長というのは初めてやった。まず最初に演者の先生を紹介して、話が終わったら皆さんに質問はありませんかと訊ねて、あってもなくても自分からも一つは何かは訊かなくちゃという役割である。演者よりはかなり気楽で、有名で話の面白い演者だと質問もいっぱい出るからさらに楽である。今回は久留米大学医学部の山岸昌一教授による‘食事から考えるウエル・エイジング’というものだった。食事に気を付けていい歳の取り方をしましょうということか▼教授は終末糖化産物(AGE)の世界的権威で、一般向けの書籍も出されていて『老けたくなければファーストフードを食べるな』や『老けない人は焼き餃子より水餃子を選ぶ』という宇都宮市民としてもちょっと聞き捨てのならないようなものもある。我々が日頃患者さんを診ていて思うことの一つは、実年齢よりも見た目が老けている人は予後が悪いということあるいは糖尿病などで一度血管や臓器が傷ついてしまうとそこから血糖をコントロールしてもなかなかいい結果が得られないということである。そしてAGEの体内への蓄積というのがその答えだ。AGEは糖とたんぱく質が反応したもので、高温であるほど量が増えるので水餃子より焼き餃子が悪いということだ▼詳細はとてもここでは書ききれないが、最も悪いものはポテトチップスで、その他揚げ物やハンバーグみたいなもの、インスタントの麺、熱はそんなでもないが時間が経ったり紫外線が当たったりしているハム・ソーセージ・ベーコン・干物・チーズなども悪い。調理法でみれば唐揚げ>蒸し鶏、焼肉>しゃぶしゃぶということになる。また体内に入ってAGEを作りやすい糖質の代表は果糖である。だから果物の食べ過ぎも悪いし、何よりサイダー・コーラ・スポーツドリンクにも果糖が入っている。100%果汁のジュースも然りである。同様に乳糖(牛乳)も悪い。某M社のヴァリューセットなんか子供に食べさせていいんだかどうなんだか考えて頂きたい▼うな重は? そう、なんだって完璧に抑えろというものではない。たまには食べたいものを食べるということも大事である。ただ全体としての方向性は保った方がいい。日々下らないものを口にしていないか検証が必要である。



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