院長ブログ

四つ葉のクローバー
宇都宮市竹林、よつばハートクリニック院長のブログ

不要不急の用

0

    子どもの頃からクラシック音楽を聴くのが趣味だ。少し高じて大学時代はオーケストラに所属し、オーボエと言う楽器を吹いていた。医師になってもう楽器はやらなくなったが、相変わらず聴くのは好きで、録音を聴くというよりはよく演奏会に出掛けていた。どの作曲家のどの曲が好きと言うのもあるが、演奏家による解釈の違いや出来映えの差と言うものに注目して聴いてきた。生身の人間が演奏するのだから酷い演奏に出くわすこともある。しかし出来の良い演奏を聴いたときの感動は何物にも代え難い▼この4月13日、午後の診療を休みにして家族と東京の演奏会に出かける予定だった。テオドール・クルレンツィス指揮ムジカエテルナの演奏で、ベートーヴェンの交響曲第9番の筈だった。1月に発売された時は人気でチケットを取るのが大変で、少し席がばらけてしまったがようやく家族6人の分を確保したのだった。その時はまさか演奏会が中止になるなんて思ってもみなかった▼クルレンツィスと言うロシアで教育を受けたギリシャ人の指揮者を知ったのは2年と少し前のことである。You Tubeで聴いて気になって昨年2月の来日公演を聴きに行った。全てチャイコフスキーのプログラムだった。その演奏を言葉にするのは難しいが、出だしから唯々凄くて、後半には聴く体力が残っていないほどだった。ムジカエテルナというのは元はこの指揮者が創った私設のオーケストラだったらしいが、変遷を遂げて今はウラル山脈の麓のペルミと言う都市の歌劇場の管弦楽団に納まっている。そのスタイルは少し変わっていて、まずチェロ以外の全員が立って演奏する。そしてそれぞれの曲はその時代の楽器を使用して(古楽器も現代楽器も両方使う)、その時代の奏法で演奏するというものである▼労働者の権利が厳格に守られるようになった昨今、欧米のメジャーなオーケストラと言えど定時で練習が終わるのが当たり前で、多少出来が悪くてもそれ以上追及しないということになる。しかしこのオーケストラは練習やレコーディングを夜中までやるらしい。今回行われる筈だったツアーに合わせてベートーヴェンの交響曲第5番の録音が発売になったのを聴いた。これまで最も演奏機会やレコーディングが多かったであろうこの曲には、数多の歴史上の名盤が知られるが、異次元の演奏だ。こういったものがロシアの大都市でなく、一地方から出てきたことに価値があると考えるのは私だけだろうか▼コロナウイルスの感染拡大で世界中が大変なことになっている。ロシアも例外ではない。いつまでこの状態が続くのだろうか。日本の感染者数や死亡者数は現時点では恐らくそこまでではないが、元々医療従事者のハードワークで成り立っていたこの国の医療は、予備能が無いので大変である。いつどうやって元の世の中に戻すかに耳目の集まるところであるが、大事なのは復旧ではなくて刷新だと思いたい。医療・経済・政治全てに問題が浮き彫りになっている。我々がこのウイルスを気にしなくて済むようになる時、どんな世の中になっているのか、またするべきか▼テレビでは不要不急の外出を避けるようにと連日言っている。音楽は不要不急と言えばそうだ。しかし不要不急の物を全部避けていると、そもそも自分自身が不用なのではないかと言う厭な気分になって来る。次に演奏会に行けるのはいつの日になることだろう。ストレスが溜まる。


    関連する記事
    コメント
    コメントする








       

    calendar

    S M T W T F S
         12
    3456789
    10111213141516
    17181920212223
    24252627282930
    31      
    << May 2020 >>

    selected entries

    archives

    profile

    search this site.

    others