院長ブログ

四つ葉のクローバー
宇都宮市竹林、よつばハートクリニック院長のブログ

COVID-19

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    新型コロナウイルスの感染が各地から相次いで報告されています。WHO(世界保健機関)はパンデミックであることを認めました。医療関係者の感染も多数報告されており、開業医でも先月の北海道美瑛町の循環器内科クリニックの医師に次いで、つい最近群馬県大泉町のクリニックの医師の感染も報道されました。大泉の医師は重症で、集中治療室で治療を受けているとのことですが、発症から何日もの間、通常の診療を続けていたそうです。私もいつ何時皆様にお会いできなくなってしまうかも判りませんので、この際皆様に出来る限りのことを書いておこうと思いました▼今回の流行についての一般の方々の反応は、大変なことと考える人もたいしたことないと考える人もいて様々ですが、専門家の比較的共通した意見として100年ぶりに起きた重大な公衆衛生上の危機とされ、私もその通りではないかと思っています。今世紀に入ってからも人類はエボラ出血熱ウイルス・SARSウイルス・MERSウイルスなど恐ろしいウイルスの流行を経験しています。当時救命センターに勤務していた私は、このような患者が来たらどうしようとそれなりの恐怖感を覚えましたが、幸いにも日本に入ってくることはありませんでした。当時私なりに考えたことは、これらのウイルスは勿論勇気ある医療者が奮闘したというのもあるでしょうが、パンデミックになりづらいというものでした。何故ならば3つのウイルスで差はありますが、比較的潜伏期間が短く、発病率が高く、発症するとすぐ重症化して死亡率が高いからです。ではどういうものが本当に世界的な拡がりを持つのでしょうか。即ち潜伏期間が長く、不顕性感染つまり発病しない人が一定確率で存在し、発病してからも重症化するのに時間が掛かるというものです。そんなウイルスが出たら嫌だなと漠然と思っていましたが、どうでしょう、今回のウイルスにぴったり当てはまると思いませんか▼100年ぶりと書きました。今回のコロナウイルス騒ぎで比較対象としてクローズアップされている1918年から1920年にかけてのいわゆるスペインかぜが前回です。人類が初めてインフルエンザウイルスとまともに対峙したわけですが、この時の死者は日本で50-60万人(人口の約1%)、世界では5000万人とも1億人ともされます。今回これに匹敵するようなことになっても不思議ではないということです。科学技術も医療水準も100年前とは比べ物にならないぐらい高いのだから、それは少し変だろうと思う方もいることでしょう。しかし伝染性疾患の歴史は文明化とともにあるのです。100年前と比べて人の移動速度や接触密度は桁違いです。一方技術の方は今のところPCRであやふやな検査ができるというだけで、特効薬もワクチンもなく、対症療法あるのみです。重症化した時の人工呼吸器や更に重症化した際のECMOと呼ばれる人工心肺も数が圧倒的に不足すると考えられます。武漢では一時そんな状態であり、現在は北部イタリアで現にそういうことが起きていると報道されています。震災で火災が多発した場合に消防車がなかなか来られないというのと似ているかもしれません▼現時点で判明している特徴を列挙してみます。まず季節性インフルエンザより感染力が数倍強く、死亡率は数十倍高いということです。一方ダイヤモンド・プリンセス号からの報告では、検査陽性者の中に無症状あるいはごく軽症の人がかなりいました。しかしまた無症状あるいは軽症の状態から重症化するスピードが速いことも特徴の一つです。集団感染が発生する場所としては、人が長時間密集して換気の悪いところで、具体例としては屋形船・スポーツジム・麻雀荘・ライブハウスなどが挙げられます。これらのことからどういうことが言えるのでしょうか。これから迎える拡大期や蔓延期において、無症候性感染者・軽症症例が多数いる以上、症状によってこのウイルスを見分けるのは不可能と考えた方が良いでしょう。感染を防ぐには端的に言うと人との接触を極力避けるしかありません▼100年前のスペインかぜの際は若い人が多く亡くなりましたが、今回のウイルスは持病のある人や高齢者で死亡率が高いことが判っています。自分はまだ若いと侮ってはいけません。40歳代から死亡例が散見されるようになり、50歳を過ぎると格段に率が上昇します。一方極限状況で働いていた中国の医療スタッフでは20代や30代の方も亡くなりました。年齢や持病に係らず、からだのコンディションを整えておくのは大事だと思います。禁煙は大事です。酒も控えた方が良いでしょう。またスペインかぜの際には感染拡大に拍車をかけたのは学校と軍隊だということが判っています。これらを総合すると若い人が媒介して家に持ち帰り、高齢者に感染させ重症化することが繰り返されるということが予想されます。学校を早期に休校にしたのは英断だったと思っています。一方栃木県でも一部の市などは行政の長の判断で授業を継続しているところがあるのは、知性を欠いた所業だと言わざるを得ません。潜伏期間が2週間もあるケースもあり、感染者が発覚した際にはもう一定の拡がりを持っている可能性が高いのです▼今回残念に思っていることがあります。それは政府の初期の対応があまりに泥縄式だったことです。ダイヤモンド・プリンセスに乗り込んだ検疫官は防護服を着ていたわけでもなく、問診票と体温計を手渡ししてまた受け取っていたというのはあまりに適切さを欠いた対応でした。一度外したマスクをもう一度した係官もいたと聞きます。こういう事を想定して専門集団を事前に作っておくべきでした。他にももっと早く出入国を制限すべきだったとか色々あります。現在もPCRを行う数が少ないのは何故だか判りません。キャパシティが少ないのもあるのでしょうが、どうもフル稼働していないようです。PCRはあやふやな検査と書きました。専門的な言葉になりますが、検査には感度と特異度というものがあります。もしその人が本当に病気だった場合、検査で陽性に出る確率が感度で、一方病気でない人が本当に陰性に出る確率が特異度です。この検査の感度は恐らく7割を切るくらいで、つまり陰性に出たからといって本当に病気でないとは限らないということで、逆に病気でないのに陽性と判定されることも一定の確率であります。ですから個々の患者においては検査結果に係らず、慎重に行動すべきです。しかしだから検査をしても意味がないというわけではないのです。個々のクラスターに於いて感染の拡がりを最小限にとどめるためにも、或いは感染の拡がりを可視化して国民に自重を促す根拠とするためにも、できる検査はやってやってやりまくるべきです。現在栃木県で2例しか報告されていませんが、そんなことは絶対にある筈がなく、何らかの力が働いて検査を制限しているからに他なりません。思えば私が小学生のころ、インフルエンザという感染症があることは承知しており、冬に流行することも死亡することがあることも知っていました。しかし直ちには検査する方法がありませんでした。ある冬の朝、風邪気味で熱を測ったら37.3℃ということがありました。その時親にこう言われました。『HさんちのR君は偉いんだってねぇ、8度5分あるのに学校に行ったんだって』。今の子供が聞いたらびっくりすると思いますが、当時はこれが美談として語られたのでした(H家のR君は現在医学部で教授をしています。優秀だから話に尾鰭が付いたのかもしれず、真偽のほどは定かではありません)。そういう意味において検査して拡がりを示すということは大事で、当時もインフルエンザの検査キットが存在すればそんなことはなかった筈です▼ 皆さんは今回のことが終息するのにどれぐらいかかると思っておいででしょうか。私の予想ではやはり初期のインフルエンザの時と同じく2年はかかると思います。そこまでに国民の5から7割が感染すると考えています。その間に亡くなる方の数は万単位でしょうか十万単位でしょうか。どうせ罹るなら予防してもしょうがないのでしょうか。そうではありません。コロナウイルスはRNAウイルスで、DNAウイルスより変異するスピードが桁違いに速く、一般に強毒化したウイルスは負の淘汰を受ける筈です。ですから後になればなるほど弱毒化した形になると予想されます。そうなるとばかりも限らないので油断できませんが。現在イタリアを中心に感染が拡がっている株は強毒で感染力も強いタイプでしょうか。心配です▼とにかく我々にできることは行動を制限することと人との接触を避けることです。そんなことをしたら経済が回らないよという声があるのは承知していますし、子供たちの勉強も心配です。でもこの機会に新しい社会のシステムを作るのが賢明です。勉強はする気になれば家でもできます。詳細は省きますが、歴史的に見ればこうしたパンデミックでは必ず社会の変革がもたらされています。現代は再生不能エネルギーを消費し続けることによって自転車操業的に経済が回転している社会です。欲の皮の突っ張った人が乗る多くの自転車が互いに接近して走行している状態で、誰かがブレーキをかけたり転倒したりすれば、多重クラッシュが起きるという構造です。こういうシステム自体を変革するひとつのチャンスではないでしょうか▼医療業界・製薬業界も反省しなければなりません。実は皆さんは風邪症状で医療機関を受診して、保険診療で投薬を受けるということが可能な世界でもかなり稀な国に住んでいます。私は医師になって以来、風邪に効く薬はありませんと言って多くの患者さんの反感を買ってきました。打ち明けますが勤務医時代に、風邪をひいたが仕事を休めないので薬をくれと言って来院した患者をアホ呼ばわりして、投書されて呼び出しを受けたこともあります。しかし熱も痰も咳も鼻水も風邪のウイルスと戦うために人間側が出しているものなので、それを薬で抑えれば基本的には感染は長引きます。それを早く飲めば早く治るが如く偽って商売をしてきた人たちがいるのです。タミフルに代表されるインフルエンザの薬だってそれを使えば半日から1日早く治るという程度のデータしかありません。しかし開業するとこういう事を説明するのも大変だし、正直希望されるがまま出してしまった方が収入になるので特に時間に追われている時はそのまま処方してしまっていました。患者さんに正しいことをお伝えする機会を疎かにしているのを懺悔しなければなりません。ではこのコロナウイルスの時代にあってはどうでしょうか。多くの医師が自分に伝染ったら大変だから来ないでほしいと思っているのが正直なところではないでしょうか。ではどうしたらよいでしょう。数日長引く風邪症候群で、自宅での安静が困難になったり息苦しさを自覚したりすれば、コロナウイルスの検査ができる医療機関を受診するべきと考えます。それまでは外出や仕事を避けて安静を保つのが一番であり、そうするのが社会的な一種の義務だと思います。体調が悪いのに仕事をするというのが社会の迷惑だということをはっきりさせなければなりません。


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