院長ブログ

四つ葉のクローバー
宇都宮市竹林、よつばハートクリニック院長のブログ

幸福の理論

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    物理学者アルバート・アインシュタインは講演のため日本に向かう船上でノーベル賞受賞の知らせを受けた。日本に着くと盛大な歓迎を受け、予定より多くの講演をこなしたとある。1922年のことだ。滞在した東京・帝国ホテルでチップの持ち合わせがなかったためか日本人ベルボーイにチップ代わりにメモを渡しこう言ったという。「運が良ければ、これは普通のチップよりも価値あるものになるかもしれない」▼昨年3月、日本人の父とドイツ人の母の間に生まれた35歳の男性がハンブルクの自宅で引っ越し作業をしていて、食器棚の引き出しの中から黄変した封筒を見つけた。中には古い紙片。ホテルのメモ用紙にドイツ語でこう書かれていた。《静かで質素な生活は、絶え間ない不安にかられながら成功を追い求めるより、多くの喜びをもたらす》。件のベルボーイの妹の孫にあたるこの男性は、自分が持っていて劣化してしまうよりもと昨年10月競売にかけた。数千ドルにはなるだろうと思っていたらしいが、あっという間に吊り上がり156万ドルで落札された。天才が日本人ベルボーイにドイツ語で、どういう意図でそのようなことを書き記したのかは判然としないが、まさか95年後にオークションにかかることを見越していたのだろうか。相対性理論(Theory of Relativity)の提唱者が幸福を相対化しているところが面白い▼この間行ったスキー場は日本人より海外の人の方が多かった。皆3-4週間ぐらいの予定で来ているのだそうである。幸せとは何であろうか。もちろん人から必要とされること・働くことも幸せである。しかし大事なことはwork-life balanceなのだろう。日本人は単純に働き過ぎというよりはこのバランスが取れていないのだろう▼先日、元いた病院のOB会(正確にはOBと現役医師の交流会)に出席した。そこにいたOBとしては私は若い方から数えて2番目で、25年前にこの病院に来た時既にOBだった方もおいでで、眩暈のするようなレジェンドたちである。何の偶然か複数の方々から同じようなことを言われた。「君、働き過ぎちゃいかんぞ」と。そんなことを言ってくださったうちの1人、80歳を過ぎた外科医は、しかしまだ現役で手術室に入っている。今シーズンはもう2回スキーにも行ったそうである。釣りもゴルフもする。最早人知を超えた世界だ▼今国会の焦点の一つは「働き方改革」だそうである。社会が大きく変わるには残念なことに何か事件が必要なのかもしれない。飲酒運転が社会的にも厳罰化されるようになり、交通事故死は減って町の自動車修理工場も仕事が減ったのは2006年福岡の海の中道の事故が転換点だったと記憶している。今回もし制度が改善されて良い方向に向かうとしたら、2015年の電通社員の過労自殺がそう記憶されるだろう。しかし裁量労働の問題や教員や医師など特殊な職業にどう適用していくかなど問題は山積している。開業して1年半、自分でも意外なことに労働時間は明らかに増加した。絶え間ない不安にかられている自分がいる。一体何を追い求めているのだろう▼メモはもう1枚あって、《意志あるところに道は開ける》とありこちらは24万ドルだったそうだ。アインシュタインが言った言葉としては普通過ぎたのかもしれない。


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