院長ブログ

四つ葉のクローバー
宇都宮市竹林、よつばハートクリニック院長のブログ

安定剤と導入剤と睡眠薬と

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    医者が普通によく処方する薬の中で絶対に手を出さないほうがよい(と私が思う)薬があるというと驚かれるだろうか。ベンゾジアゼピンという一群の薬である。アルプラゾラム(ソラナックス)、エチゾラム(デパス)、ロラゼパム(ワイパックス)などの抗不安薬やブロチゾラム(レンドルミン)、トリアゾラム(ハルシオン)などの睡眠薬(いずれもカッコ内は商品名)がこれに含まれる。一般名では〜ゾラム、〜ゼパムと付くことが多いが、そうでない場合もあるから注意が必要である。懺悔しなければいけないが、自分もかなり以前の一時期には時々処方した。今思えば安直に過ぎたと思う。何がいけないのか▼第一に依存性つまり離脱症状の強さである。長く使用すればするほどその度合いは増す傾向にある。抗不安薬としての使用では中断により焦燥感や不安感が増大し、とにかくそれ無しではいられないのである。また睡眠薬としても無いと眠れなくなるのである。上述した薬剤名はほとんど短時間で効果を発揮するものばかりであるが、一般にそうした短時間作用型のものほど依存性も離脱症状も強い。第二にみんな当然のように運転しているのだが、いずれも添付文書上運転を禁じられているものばかりである。というと睡眠薬としての使用であれば飲んだら寝るので問題ないように思われるかもしれないが、重要な基本的注意として必ず「本剤の影響が翌朝以後に及び、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、自動車の運転等の危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること」と書かれている。実際に内服中や内服した翌日の事故率上昇やブレーキに対するレスポンスの悪さ、車線をトレースする能力の低下などを示すデータは多数出ている。第三に死亡率の上昇である。肺炎特に誤嚥性肺炎の発病率が高まるし、転倒骨折して寝たきりになる確率も高まる。また認知機能の低下とも関連を裏付けるデータもある。睡眠時無呼吸があれば当然悪化する▼だが何よりも常用量依存といって通常の量を2週間とか比較的短期間内服しただけで明らかにおかしくなってしまう人がいる。内服を継続していても離脱症状が出て、増量や他剤の併用を余儀なくされるのである。当然何かのきっかけで内服が開始されたのであろうが、どうやっても元の自分に全く戻れなくなってしまうのである。こういった様子は‘Benzo Case Japan’というサイトに詳しい。日本でふとしたきっかけでベンゾジアゼピンを処方されて大変な思いをしたニュージーランド人が運営しているものである。少し読みづらい日本語ではあるが立派なものだ。精読すると臨床医の端くれとして思い当たる節がたくさんある▼クリニックを開業してこの方というもの動悸や胸部不快を訴えて、ベンゾジアゼピンの依存症と思われる方が多数来院された。そして止めさせよう、止めて頂こうといろいろ試みたが、最終的には皆来院されなくなってしまった。恐らく安直にこれら薬剤を処方してくれる元のクリニックか他の医療機関へと移っていったものと思われる。止めさせ方が少し性急だったかもしれないとも反省もしているが。この業界に入ると同業者を批判してはならないと先輩や同業者から色々忠告や警告を受けるが、声を大にして言わなければならない。お笑いコンビの片割れがこの類の薬を3つ(運転禁忌・運転禁忌・運転注意の3つである)飲んで運転して捕まったのは記憶に新しい。記事によると初めて飲んだみたいなことが書いてあったが、初診の患者にこれら3つをいきなり同時に出すなどということは到底ありえないと思うのだが本当だろうか。本当だとしたら一体患者を何だと思っているのであろうか。


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