院長ブログ

四つ葉のクローバー
宇都宮市竹林、よつばハートクリニック院長のブログ

AED

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    4年前の初夏のことだ。仮にIさんとする。Iさんは50歳(当時)の男性。東京都在住で平日の朝、商用で初めて宇都宮を訪れた。そして駅のバス乗り場で倒れた。詳細な時刻は不明。顔面に挫創あり。9時15分に駅職員がAED(自動体外式除細動器)で1回ショックをかけたが、CPR(心肺蘇生)は行わず。その後10回ショックメッセージがあったが、怖くなり全てキャンセル。同18分救急隊現着時、死戦期呼吸あり。CPR開始。初期波形心室細動でその場で2回ショックを行い、車内に収容した。車内で4回ショックを施行したが心室細動のままであった。9時41分救命センター着。やはり心室細動であり静脈路確保後エピネフリン投与。同43分に電気ショックをかけ、44分に自己心拍再開(ROSC; Return of spontaneous circulation 業界用語で‘ロスク’。サ変動詞化可。‘ロスクした’とか)した▼循環器内科はこのタイミングで呼ばれる。Bystander CPR(バイスタンダー;その場にいた人 が直ちに行う心肺蘇生)はこれじゃあったとは言えないし、30分以上止まってたのか厳しいなぁと思いつつも周囲の血気盛んな若いお医者さんたちに急かされるようにして一通りのことをやる。心電図では判らなかったが冠動脈造影をしたらやはり左前下行枝の根元で詰まっていた。ステントを植え込んだはいいがその後どんどん血行動態が悪化し、PCPS(経皮的心肺補助装置;短時間で比較的簡便に入れられる人工心肺)を装着した。通常これは負け戦である。東京から駆け付けた奥さんの凍り付いたような顔が忘れられない。茫然とはこのような状態を言うのだろう。人間はあまりに衝撃的なことが起きると反応を失うものか▼考えて欲しい。AED(Automated External Defibrillator)とは何であろうか。心室細動の時にショックを加えてROSCを得ようという機器である。心室細動かどうかは「自動」的に機械が判断する。何故最後の発射ボタンが人間に委ねられているかというと、救命対象に誰も触れていないかまでは機械で判断できないからである。触れていればその人も通電されてしまう。対象の意識状態や呼吸が普通ではない(死戦期呼吸;前項参照)と感じたらとりあえず装着してみること、そしてショックメッセージが出たらそれに従うこと、従い続けることである。更にはAEDを使用してもROSCが得られなければCPRは続けなければならない。AEDの利用により救命対象に逆に障害を与えた場合でも悪意がなければ使用者は患者本人や遺族から責任を問われないことになっているし、基本的にそんなケースはありえない。日本の救急車は要請から現着まで平均で7分。それでは間に合わないので各所にAEDが配備されていることを理解しなければならない▼Iさんは今、東京から私のクリニックに通院している。第10病日頃から徐々に意識を回復し、第29病日に独歩退院した(と書くと簡単だが、気管切開したりなかなか壮絶だった)。どうせ難しいだろうけど次に助ける人のための練習だと思って治療していたのが正直なところ。もちろん手は抜いてないが、どうして助かったのだろう。東京の病院に紹介するものだと思っていたが、ご希望もあって続けて拝見することにした。遠隔期にステント留置部に再狭窄を来したが、バルーン治療を追加してその後は無事である。さすがに開業するとき再度東京の医療機関をお勧めしたのだが・・・。妙に明るい人なので後遺障害かな?と思って何度か奥さんに確認したが(何度も訊いてすみません)、元からだそうである。


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