院長ブログ

四つ葉のクローバー
宇都宮市竹林、よつばハートクリニック院長のブログ

心「肺」停止

0

    以前から不思議に思っている言葉に「心肺停止」というのがある。心臓が止まれば最終的には肺も止まる。脳も止まる。肝臓も腎臓も。何故「心停止」と言わないのだろう。肺だけクローズアップされる理由は何か。英語にするとcardiopulmonary arrest (CPA)になる。救命センターで仕事をしていると、「シー・ピー・エーの患者さん入りまーす」と一報が入る。おいおい、この忙しいのにマジかよ・・・・と心の声。ところが英語圏での使用はcardiac arrest(心停止)の方が多いようである。Cardiopulmonary resuscitation(CPR; 心肺蘇生)という言葉はある。心臓マッサージとともに人工呼吸をする必要があるからであるが、そこから派生したのだろうか▼少し前のニュースであるが、皆さんご覧になったであろうか。

    新潟県加茂市の高校で7月、野球部の練習直後に倒れ重体になっていた2年生の女子マネジャー(16)が、5日に入院先の病院で亡くなった。死因は低酸素脳症だった。7月21日午後5時半すぎ、3・5キロ離れた野球場での練習に参加。午後7時半ごろに練習を終え、部員と一緒に走って学校に戻った直後、玄関前で倒れたという。駆けつけた監督は「呼吸は弱いけれどある」と判断し、救急車が来るまでの間AED(自動体外式除細動器)は使用しなかったという。(2017年8月6日朝日新聞より抜粋)

    記事の内容から判断するに、消防署で一般市民に対して行う講習を受ければできる程度の心肺蘇生とAEDの使用があれば助かった蓋然性が高い。この件に関する様々な報道で‘死戦期呼吸’という言葉が出てくる。結論から言うと心臓が止まっていても呼吸が完全には止まっていない状態があり、その呼吸の仕方には一定の特徴があって、これが見られたら心肺蘇生を開始しなくてはならないということだ▼死戦期呼吸とはどんなものだろうか。_竺楔撞 下顎を動かして空気を飲み込むような呼吸 顎だけ動いて胸郭は動かない鼻翼呼吸 鼻翼が広がったり縮んだりでやはり胸郭は動かないあえぎ呼吸 深い吸息と速い呼息が数回続いた後に無呼吸となる。一方心停止はどういうふうに定義されるか。/汗纏 (asystole) 心電図もまっ平らな状態¬橘性電気活動 (pulseless electrical activity) 心電図上収縮波形はみられるが脈が触れないL橘性心室頻拍 (pulseless ventricular tachycardia) 心室頻拍で脈が触れないものた桓失抛 (ventricular fibrillation) 心筋が不規則に痙攣し、機能的な収縮運動がみられない。新潟県のケースは報道から心室細動だったと考えられる。心静止でも1分ぐらいは死戦期呼吸が見られることはあるが、長く続かない。一方心室細動ではかなり長く観察されることもある。実は血圧にすると30mmHgぐらいに相当する血流が出ており、脳幹機能がある程度保たれるからである。だから心静止より心室細動のほうが同じ心停止に分類されていても断然蘇生率も社会復帰率も高い▼心臓が止まれば呼吸も直ぐ止まる・呼吸があれば心臓も動いているという思い込みがあったのであろうか。「心肺停止」という言葉が足を引っ張っているような気がした。


    関連する記事
    コメント
    コメントする








       

    calendar

    S M T W T F S
          1
    2345678
    9101112131415
    16171819202122
    23242526272829
    3031     
    << August 2020 >>

    selected entries

    archives

    profile

    search this site.

    others