院長ブログ

四つ葉のクローバー
宇都宮市竹林、よつばハートクリニック院長のブログ

アートの世界

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    七夕の朝、長く拝見した慢性心不全の女性が亡くなった。85歳だった。最初からすると10年ぐらいになるだろうか。沢山診ている患者さんの中で大事とか大事でないとかがある訳ではなく、皆大事なのであるが、特に思い出に残る患者さんの一人であった。とにかくよく喋るし、食べるのも大好きな人だった。`私はね、この先生じゃなかったらもうとっくにこの世にいないの’ などと周囲の患者さんに吹聴するものだからちょっと気恥ずかしかった▼病を得るという。別に欲しくて貰うわけではないから変な表現であるが、人間はこの病を得てからが真価を問われるのではないかと思ったりもする。果たしてこの方は考え方がポジティブであった。いろんな失敗をしてその度に入院したり指導されたりするのであるが、どこまでも明るく前向きに対処する。そして周囲に対する感謝の気持ちを忘れない。病気からして食餌や塩分・水分などにも可哀そうなくらい制限がつくのであるが、ちょっとだけ許可された寿司などを本当に美味しそうに食べたという▼`先生の患者さんてみんな長生きですよね’ と元いた病院のスタッフに言われることが時々ある。特段これといった決め手みたいなものがある訳ではない。この薬よりよく似てるけどこっちの薬のほうがほんのちょっといいとか、1日の飲み水をあと200cc増やした方がいいとか、ほんの少し運動が足りてないとかそういう細かい調節の集大成だと思う。そしてこの作業は患者さんの生い立ちや性格、受けた教育、職業などに影響を受けるのでコミュニケーションはとても大事である。カッコつけすぎかもしれないが一種のアートだと思ってやっている。しかし最後にはどうにも筆の入れ場所がなくなってしまうものである▼この方のご主人もかつて冠動脈にステントを私が入れた患者さんだった。今はそっちの方が多少進んでしまって別の病院にお住まいになっている。ご子息によると病院から出てきて葬儀には参列されたんだそうである。応対もそれなりにちゃんとした。ところが後日病院に行ってみると ‘ばあさんはどうしてるかなぁ〜’ と言ってたと。面倒くさいからまだ生きていることにしたんだそうな。描いたとおりに描けてないのもアートであるが、趣のある絵になっている。


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